ウエルポイント工法とは
ウエルポイント工法とは、ウエルポイントという長さ70cm外形50mmのストレーナー濾過網をもった吸水管にΦ½"長さ5.5m~7mの吸水管(Reserpipe)を取り付けたものを地盤中に多数打ち込んで小さな井戸のカーテンを作り、Well pointポンプで強引に地下水を吸収低下させ、必要な区域の地下水を揚水し地下水位を低下させると同時に、さらに経済的な軟弱地盤の改良工法として広く普及されております。
ウエルポイント工法の目的は地下水面以下の掘削工事に於て従来の工法で困難を伴う土質に適用され、経済性、安定性、能率性を高度に発揮するものであります。
このウエルポイント工法の特徴としては、
1. 地下水位の低下
ドライワークによる土木工事の容易(水圧、土圧の軽減)からくる土留工事の簡素化、安全、工期の短縮、ひいては工事費の削減
2. 土の剪断強度増加
切取(掘削)、盛土法面の安定と、掘削底面の地盤強化
3. 圧密有効圧の増加
浮力の減少による地盤強度の増加
4. 負圧の効果
軟弱地盤改良の圧密促進強化
等が上げられます。
ウエルポイント工法は地下水の低下や土の安定性を増し、工事中はドライワークで仕事を仕上げることができますので、従来のような危険も除去でき確実に、又、経済的に仕事を仕上げる事が出来ます。
基本計画の概念と応用
ウエルポイント工法の対象は地下の土質と地下水にあるので、地上構造物とちがって正確な計画をたてることは極めて困難であるが、初めに綿密な予備調査による最善の計画をたてて将来の工事実施に当って、大きな変動のないようにすることは、工事経験上極めて重要なことであります。
地下水位を低下する工法としては釜場、深井戸、ジーメンスウエル、ディープウエル、ウエルポイント及びエレクトロオスモンス等の各種があるが、一般に地盤を構成する土質が礫とか粗い砂で成り、透水度のよいものは地下水を汲み上げたときの動水勾配は緩となります(影響圏の半径は大きい)。また、掘削深度がさほど深くなくQuick Sandのおそれのない場合は従来の釜場でもよく、透水度はよいがQuick Sandのおそれのある場合は深井戸、これより稍々透水度は低いが粗い流通のよい砂地盤ではジーメンスウエルで目的を達することができます。漸次粒度が小さくなり10-3程度以下となると最早や前述の方法では不可能で、ウエルポイントに依存する外はありません。ウエルポイント工法を用いると10-5程度まで充分吸水することができます。10-6以下ではウエルポイントと電気滲透法を併用して目的を達成することができます。
従って釜場揚水による基礎工事と、ニューマチックケーソンによる基礎工事との範囲内にウエルポイントによる基礎工事としての巾広い領域がある訳です。
また、地下水が極めて多く他の方法では到底水替えができないような地盤で、単に急速に水位を低下してdry workで工事を完成させる目的に使われるものとしては砂地質の多い河口デルタ地帯があげられます。都会地のシルト、粘土を多く含む地盤で湧水量はさほど多くはないが、脱水が極めて困難で、そのために矢板背面の土圧が大きく、又掘削底面が泥檸化して掘削が極めて困難な場合にもウエルポイントは重要な役割を果すことができます。その他細砂層の掘削に際してQuick Sand防止の目的にも用いられます。
これらdry work、Quick Sandの防止、矢板背面土圧の軽減、地耐力の増強、法面の安定等は、相関連してその目的を果たすもので、その他にも粘性土の軟弱地盤の基礎を固めるため、人為的に圧密を促進させる目的にもウエルポイント工法が応用されております。
さらに砂層を通るトンネル工事等では、導抗内のクイックサンド防止が主で、dry workはむしろ第二義的に用いられます。建築の基礎ではdry work土留の土圧軽減、地耐力の増強等が、又水道及び水道管の布設ではdry work及び法面の安定を主とし、ダムの深い基礎ではdry workと法面安定が目的とされます。地盤構造と建造物の基礎との関係から、上部をウエルポイントによってdry workとケーソン軀体底面の地耐力の増強を計り、下部をケーソンとするとか、あるいはまたサンドパイル工法の四周にウエルポイントを設置して、これが吸引によって、サンドパイル載荷量を減少する等広い範囲にわたって応用されております。
基本原理
ウエルポイントの基礎原理を、大気圧に触れるU字管に於て説明するとA図に於ては管内の水は、大気圧に依って、水頭水面は釣合が保たれ、即ち、両水面は等しい力P1=P2=0.1MPa(1kg/㎠)の圧力で押されています。B図に於て、U字管の右側管を真空にすると右側管内の大気圧は減圧され、左右管内の水面への圧力は均等を失い管内の水は弱められた圧力の側に向って流れを生じ、ここに、重力水頭H0が得られます。左側管内の水は、大気圧差に等しい水頭まで押し下げられますから、真空側に流れる水は、C図の様にポンプによって排除されます。
ウエルポイント工法(Well Point Method)も同じ理由に依って、地中に挿入されているウエルポイントはヘッダーパイプ迄の連絡部でAir Leakを防ぐ様にします。ウエルポイントは、自由に大気圧に触れられる組成で地中に挿入されてヘッダーパイプ管内の大気圧Pが、真空ポンプに依ってP0となると、ウエルポイントは大気圧との差を生じ、地下水はウエルポイントのMeshを通って吸収され、ヘッダーパイプに導かれます。此の場合に生ずる水頭は大気圧との差に等しい水頭H0となります。
ウエルポイント工法は、通常多数のウエルポイントを設置します。簡単に1本のウエルポイントによる地下水の低下について説明しますと図に示すように揚水前の地下水位の高さを不透水面上HとしRを水位低下が及ぶ距離(影響圏の半径)、r1を揚水井戸の半径Z1を井戸内の水位とし、透水層の透水係数をKで表わせば任意の位置における地下水位の低下水位の低下量が決まり、それに対応するくみ上げ量qは次式で表すことができます。